この記事の要点
- カルガモの寿命は野生下で5〜10年、飼育下ではさらに長生きすることも。マガモとほぼ同じ寿命で、環境によって大きく変わります。
- カルガモの飼育には狩猟許可が必要で、鳥獣保護法により愛玩目的での捕獲は原則禁止。ペットショップでの販売はほぼありません。
- 日本では主に留鳥として一年中観察できる身近な水鳥。活発で社交的な性格が特徴で、都市部の公園でも見かけます。
カルガモの寿命は、野生下では5年から10年程度とされています。ただし、飼育下ではもっと長生きする傾向があり、適切な環境と栄養管理のもとでは10年以上生きることも珍しくありません。野生のカルガモは天敵や環境変化、食糧不足などのリスクにさらされるため、飼育下に比べて寿命が短くなる傾向があります。
カルガモは春から夏にかけて生まれたヒナが、冬が来る前には成鳥になるほど成長速度が非常に速いのが特徴です。この早い成長は、厳しい自然環境を生き抜くための適応戦略と考えられています。また、カルガモはマガモと近縁な種であるため、寿命についてもマガモのデータが参考にされることが多いです。
マガモはカルガモと同じマガモ属に分類される近縁種で、野生下での寿命は5〜10年、飼育下では10〜20年とされています。福岡市動物園などの公的機関のデータによると、マガモの最長記録は29年という驚異的な長寿例も報告されています。
カルガモとマガモは生物学的に非常に近く、交雑も確認されています。そのため、寿命に関してもほぼ同等と考えられています。両種とも適切な環境下では長生きする可能性を秘めており、野生下での寿命が短いのは、主に天敵や病気、食糧難などの外的要因によるものです。
| 項目 | カルガモ | マガモ |
|---|---|---|
| 野生下の平均寿命 | 5〜10年 | 5〜10年 |
| 飼育下の平均寿命 | 10年以上 | 10〜20年 |
| 最長記録 | データ不明 | 29年 |
| 日本での分布 | 留鳥(一年中) | 冬鳥(越冬のため渡来) |
| 外見の特徴 | オスメス同色(褐色) | オスは緑の頭、メスは褐色 |
| くちばしの色 | 先端が黄色、基部が黒 | オスは黄色、メスはオレンジ |
カルガモは野鳥であり、鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)によって保護されています。このため、許可なく捕獲したり飼育したりすることは法律で禁止されており、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
カルガモは狩猟鳥獣に指定されているため、狩猟期間中(一般的に11月15日〜2月15日)に狩猟許可証を持った人が適法に捕獲した個体であれば、飼育登録を行うことで飼育が可能です。ただし、2012年4月以降、愛玩飼養を目的とした野鳥の捕獲許可は原則として全面禁止となっています。これは、密猟や違法取引を防止するための措置です。
- ヒナや卵の採取は完全禁止 – たとえ狩猟期間中でも、カルガモのヒナや卵を採取することは法律で禁止されています。
- 無許可での飼育は犯罪 – 違法に捕獲・飼育すると、罰金や懲役刑の対象になります。
- 飼養登録が必須 – 適法に捕獲した個体でも、市町村での飼養登録と足環の装着が義務付けられています。
- 最後まで責任を持つ – 一度人間の手で飼育された野鳥は野生に戻ることが困難です。飼育する場合は生涯にわたる責任が求められます。
カルガモをはじめとする野鳥の飼育が厳しく制限されている背景には、生態系保護と密猟防止という2つの重要な目的があります。過去には愛玩飼養を口実にした違法な野鳥捕獲が横行し、特にメジロなどの人気種では密猟が深刻な問題となっていました。2012年の法改正により、愛玩目的での捕獲許可が原則禁止となり、野鳥保護が強化されました。
また、野生動物は本来自然の中で生きるべき存在であり、人間の都合で捕獲して飼育することは、動物福祉の観点からも問題視されています。カルガモのような水鳥は広い水場が必要で、一般家庭での飼育環境を整えることも容易ではありません。
結論から言うと、カルガモはペットショップでほとんど販売されていません。前述の通り、カルガモは野鳥であり、愛玩目的での捕獲が禁止されているため、一般的なペットとして流通することはありません。ペットショップで「カモ」として販売されているのは、ほとんどが合鴨(アイガモ)です。
合鴨はマガモとアヒルの交雑種で、家禽として品種改良されているため、野鳥保護法の対象外です。合鴨の価格は、ヒナの段階で数百円から数千円程度が相場となっています。成鳥の場合は数千円から1万円程度です。一方、カルガモは野鳥であるため、市場価格は存在しません。
カルガモに魅了され、どうしても身近で飼育したいという方には、いくつかの代替案があります。最も現実的なのは、合鴨(アイガモ)やアヒルを飼育することです。これらはカルガモと同じカモ科の鳥で、外見や行動もよく似ていますが、家畜化されているため飼育が法的に認められています。
また、カルガモを身近に感じたいだけであれば、近くの公園や川でバードウォッチングを楽しむという方法もあります。カルガモは日本全国の水辺に生息しており、特に都市部の公園や池では一年中観察できます。餌付けは禁止されている場所が多いですが、観察するだけでも十分にカルガモの魅力を感じることができるでしょう。
カルガモはアジア東部を中心に分布しており、日本、中国、朝鮮半島、ロシア東部などで見られます。日本では北海道から沖縄まで全国的に生息しており、特に本州以南では留鳥として一年中観察できるのが特徴です。留鳥とは、同じ地域に一年中留まり、繁殖も子育ても行う鳥のことを指します。
ただし、カルガモの中にも渡りを行う個体が存在します。特に北海道や東北地方など寒冷地に生息する個体は、冬季になると暖かい地域へ移動することがあります。標識調査により、サハリンや中国大陸へ渡る個体がいることも確認されています。このように、カルガモは部分渡りという習性を持ち、すべての個体が留鳥というわけではありません。
| 地域 | カルガモの行動 | 観察しやすい時期 |
|---|---|---|
| 本州以南 | 留鳥として一年中生息 | 通年 |
| 北海道 | 一部の個体は冬に南下 | 春〜秋が多い |
| 東北地方 | 部分渡り(留鳥と渡り鳥が混在) | 通年だが冬は減少 |
| 都市部の公園 | 人工池や川で留鳥として定着 | 通年(春の親子が人気) |
近年、カルガモは都市環境への適応力が非常に高いことで知られています。東京や大阪などの大都市の公園や皇居の堀、オフィス街の人工池などでも普通に見られるようになりました。都市部のカルガモは、人間の活動に慣れており、比較的近くで観察できることも多いです。
バードリサーチの調査によると、カルガモの分布域は過去数十年で広がっており、特に中国地方や北海道北部で新たに記録されるメッシュが増えています。一方で東北地方では減少傾向も見られ、地域による増減の差が注目されています。都市化が進む中でも、カルガモは驚くべき適応力を発揮している野鳥の一つと言えるでしょう。
カルガモは活発で社交的な性格が特徴です。ヒナの時期から非常に活動的で、生まれてすぐに歩けるようになり、母鳥の後を追って水場へ移動します。成鳥になると「グェグェ」という特徴的な鳴き声を上げ、群れで行動することが多くなります。冬季には大きな群れを形成し、安全な水面で休息する姿が観察されます。
食性は雑食性で、水生昆虫、水草、水辺の草の実や葉など、さまざまなものを食べます。採食は主に夜間に行われ、昼間は比較的のんびりと休息していることが多いです。時にはイネなどの農作物を食べることもあり、「害鳥」として扱われるケースもありますが、一方で水田の害虫を食べるなど農業に貢献する面もあります。
カルガモは春から夏にかけて繁殖期を迎えます。メスは一度に10〜12個の卵を産み、約1ヶ月間抱卵します。興味深いのは、カルガモの子育ては基本的にメスのみが行うという点です。オスは抱卵が始まるとメスから離れ、他のオスと群れを作って別行動をとります。ただし、近年では繁殖地の密度が高まったことなどから、オスがボディガードとして家族と共に行動するケースも観察されています。
カルガモの子育ては「スパルタ教育」とも呼ばれ、母鳥は巣の提供とヒナの保護は全力で行いますが、餌はヒナ自身が探して食べる必要があります。春先によく見られる「カルガモのお引っ越し」は、ヒナを食べ物が豊富な川や池へ導く行動で、時には道路を横断することもあり、ニュースになることもあります。ヒナは急速に成長し、8月頃には親鳥とほぼ同じ大きさになります。
カルガモの寿命は、さまざまな要因によって大きく左右されます。野生下では、天敵、病気、食糧不足、環境汚染などが主な死亡原因となります。特にヒナの時期は、カラスやタカなどの猛禽類、イタチやカラスなどの哺乳類に捕食されるリスクが高く、成鳥まで生き残る確率は決して高くありません。
バードリサーチが実施した「カルガモ・サバイバル調査」では、ヒナの生存率を追跡し、何羽のヒナが無事に成長できるかを調べています。環境の良い場所でも、生まれたヒナの全てが成鳥になれるわけではなく、厳しい自然淘汰が働いています。一方、飼育下では天敵や食糧不足の心配がないため、野生下の2倍以上の寿命を全うすることも珍しくありません。
- 天敵 – カラス、タカ、イタチ、ヘビ、犬、猫などがヒナや卵を狙います。
- 病気 – 野鳥は感染症のリスクにさらされており、特に密集した環境では病気が広がりやすくなります。
- 交通事故 – 都市部では道路横断時に車にひかれるケースがあります。
- 環境汚染 – 水質汚染や化学物質による影響で健康を害することがあります。
- 食糧不足 – 干ばつや冬季の厳しい環境下では、十分な餌を得られないことがあります。
長生きするカルガモには共通する条件があります。まず、良好な水質の環境が重要です。清潔な水は餌となる水生昆虫や植物の生育に不可欠であり、カルガモ自身の健康維持にも直結します。次に、天敵から身を守れる安全な環境です。島や湿地、人工池など、陸上の捕食者が近づきにくい場所は、カルガモにとって理想的な生息地となります。
また、豊富な食糧源も長寿の鍵です。水草、昆虫、種子など多様な餌が安定して得られる環境では、カルガモは健康的に長生きできます。人間との関わりも重要で、餌付けは推奨されませんが、人間がカルガモの生息地を保全し、交通事故を防ぐ配慮をすることで、彼らの寿命を延ばすことができます。
まとめ:カルガモと長く共存するために
カルガモの寿命は野生下で5〜10年、飼育下ではさらに長く生きることができます。しかし、カルガモは野鳥であり、鳥獣保護法によって守られているため、ペットとして飼育することは法的に厳しく制限されています。カルガモを愛するのであれば、自然の中で彼らを観察し、生息地を保全することが最善の方法です。
都市部でも身近に見られるカルガモは、私たち人間と共存できる貴重な野鳥です。春の親子の引っ越しシーンを温かく見守り、水辺の環境を大切にすることで、カルガモたちがより長く健康に暮らせる社会を作っていきましょう。

