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亀は爬虫類?両生類?正しい分類と科学的根拠

「亀は爬虫類ですか、それとも両生類ですか?」この質問は意外と多くの方が抱く疑問です。結論から言えば、亀は爬虫類(Reptilia)に分類される脊椎動物です。ではなぜ亀は爬虫類に分類されるのでしょうか?その科学的根拠と特徴を見ていきましょう。
亀が爬虫類に分類される決定的な特徴
亀が爬虫類に分類される理由には明確な特徴があります。まず、亀は乾燥に強い鱗や甲羅で覆われた皮膚構造を持っています。これは水分蒸発を防ぎ、陸上生活に適応した爬虫類の重要な特徴です。また、亀は肺で呼吸します。両生類の多くが皮膚呼吸も行うのに対し、亀は完全に肺呼吸に依存しています。
さらに、亀は周囲の環境温度に体温が左右される変温動物(外温動物)です。これは爬虫類全般に見られる特徴です。加えて、亀は陸上で産卵し、その卵は乾燥から胚を守る特殊な膜(羊膜)を持っています。これは爬虫類の進化上の重要な特徴の一つです。そして、亀は卵から小さな成体として孵化し、両生類のような変態を経ません。これらの特徴から、亀は明確に爬虫類に分類されるのです。
爬虫類としての亀の系統分類学的位置づけ
亀は爬虫類の中でも非常に古い系統に属しています。現代の分類では、亀(カメ目)は爬虫類の主要なグループの一つとして位置づけられています。現生爬虫類には亀(カメ目)、ワニ目、鳥類(恐竜の子孫)、有鱗目(トカゲ、ヘビ)、ムカシトカゲ目(ムカシトカゲ)が含まれます。
亀の祖先は約2億1000万年前(中生代三畳紀後期)に出現したとされており、爬虫類の中でも非常に長い進化の歴史を持っています。この古代からの生存者である亀は、地球の生命史において重要な位置を占めているのです。
亀と両生類の明確な違い
亀が爬虫類に分類される理由をより明確にするために、両生類との主な違いを比較してみましょう。
特徴 | 亀(爬虫類) | 両生類(カエルやサンショウウオなど) |
---|---|---|
皮膚 | 乾燥した鱗や甲羅 | 湿った薄い皮膚 |
呼吸 | 肺呼吸のみ | 肺呼吸と皮膚呼吸の併用(多くの種) |
産卵環境 | 陸上 | 水中(多くの種) |
卵の構造 | 羊膜卵(乾燥から保護) | 無羊膜卵(水分が必要) |
発生 | 直接発生(卵から小さな成体が誕生) | 間接発生(オタマジャクシなどの幼生期を経る) |
水依存度 | 種によって異なるが、完全に陸上生活する種も | 高い(多くの種が生活環の一部で水が必要) |
これらの違いを見れば、亀が両生類ではなく爬虫類に分類される理由が明確になるでしょう。亀は進化の過程で陸上生活に適応した特徴を獲得しており、これらの特徴が爬虫類としての分類を裏付けています。
亀の驚くべき生物学的特徴

亀は爬虫類の中でも非常にユニークな生物です。その生物学的特徴には、多くの人が「亀のすごいところ」として驚くポイントがあります。
甲羅の秘密:世界に類を見ない構造
亀の最も特徴的な部分は何といっても甲羅です。この甲羅は単なる外皮ではなく、亀の体と一体化した驚くべき構造を持っています。甲羅は背甲(背中側)と腹甲(腹側)の二つの主要部分からなり、背甲は肋骨や脊椎と融合しています。亀は肋骨の「中に」いる唯一の脊椎動物なのです。
甲羅の表面は角質のスケール(甲板)で覆われており、成長とともに大きくなります。年輪のような成長線も見られます。甲羅は亀に優れた防御機能を提供する一方で、体の構造に大きな制約をもたらしています。例えば、私たち人間を含む多くの脊椎動物が肋骨の動きで呼吸するのに対し、亀は肋骨が固定されているため、独自の呼吸法を発達させなければなりませんでした。
肋骨が動かせない生き物の特殊な呼吸法
亀の呼吸は非常にユニークです。肋骨を動かせないため、四肢の付け根にある特殊な筋肉を使って呼吸します。水生の亀の中には、総排泄腔(肛門)を通じた水呼吸ができる種も存在します。さらに驚くべきことに、一部の種は冬眠中に皮膚呼吸を行うことができるのです。このような柔軟な呼吸戦略が、亀の様々な環境への適応を可能にしています。
脊椎動物の中でも際立つ長寿の秘密
亀は脊椎動物の中でも特に寿命が長いことで知られています。ゾウガメなどの大型種は150年以上生きる個体もいます。成長が遅いため、性成熟に達するまでに数十年かかる種もあります。
この長寿の秘密は、細胞の老化防止メカニズムの発達と代謝の遅さにあります。亀は細胞の修復能力が高く、DNAの損傷を効率的に修復できることが研究で明らかになっています。また、基礎代謝率が低いため、体への負担が少ないことも長寿の一因と考えられています。
意外と優れた亀の感覚能力
亀は一見鈍重に見えますが、実は優れた感覚能力を持っています。嗅覚が発達しており、食べ物や配偶者を見つけるのに利用します。多くの種が色彩視を持ち、色を識別できます。また、甲羅には神経終末があり、触られたことを感じることができます。
特筆すべきは、一部の海亀が持つ地磁気を感知する能力です。この能力によって、何千キロもの長距離を移動し、生まれた浜辺に戻って産卵することができるのです。亀のこれらの生物学的特徴は、2億年以上にわたる進化の過程で獲得された優れた適応の結果なのです。
亀の種類と多様性:水棲から陸棲まで

「亀の種類がわからない」と思われる方も多いでしょう。世界には約280種の亀が存在し、環境への適応によってさまざまな特徴を持っています。ここでは代表的な亀のグループと、日本でよく見られる種類を紹介します。
進化で分かれた亀の主要グループ
亀は大きく以下のグループに分けられます。カメ目ヨコクビガメ科には首を横に曲げて甲羅の中に引き込む種が含まれます。カメ目クリガメ科にはクサガメやイシガメなどが含まれます。カメ目リクガメ科にはゾウガメなどの陸棲種が含まれます。
また、カメ目スッポン科には甲羅が柔らかい水棲種が含まれます。カメ目ウミガメ科には海に適応した種が含まれます。これらのグループは、長い進化の過程で様々な環境に適応して分化してきました。
生活環境による亀の分類
亀は生息環境によっても分類されます。水棲の亀は一生の大部分を水中で過ごします(ミドリガメ、クサガメなど)。半水棲の亀は水陸両方で生活します(イシガメなど)。陸棲の亀は主に陸上で生活します(リクガメ類)。海棲の亀は海に適応した種です(ウミガメ類)。
それぞれの環境に適応した体の構造や行動を持っており、例えば水棲種は水中での高い泳ぎの能力を持ち、陸棲種は乾燥環境に適応した水分保持能力を発達させています。
日本の在来種と外来種
日本にも多くの亀が生息しています。在来種としては、日本固有種で現在は絶滅危惧II類に指定されているニホンイシガメや、日本や東アジアに分布する半水棲のクサガメ、甲羅が柔らかく高級食材としても知られるスッポンがいます。
一方、外来種としては、ペットとして大量に輸入され現在は特定外来生物に指定されているミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)や、大型で攻撃的な性格を持ち特定外来生物に指定されているカミツキガメ、大型で強力な顎を持つ北米原産のワニガメなどがいます。これらの外来種は日本の生態系に大きな影響を与えており、特に注意が必要です。
世界の代表的な亀の種類
世界には多様な亀が存在します。有名な大型種としては、ガラパゴス諸島の固有種であるガラパゴスゾウガメや、インド洋のアルダブラ環礁の固有種であるアルダブラゾウガメ、北米最大の淡水ガメであるスッピングタートルなどがいます。
希少種・絶滅危惧種としては、世界中の熱帯・温帯海域に分布する海亀であるアカウミガメや、美しい甲羅を持つウミガメであるタイマイ、沖縄本島北部の固有種であるヤンバルイシガメなどがいます。
特殊な適応を持つ種としては、奇妙な形の頭と首を持つ南米の水棲ガメであるマタマタや、平たい甲羅を持つアフリカのリクガメであるパンケーキリクガメ、地中海沿岸に生息するリクガメであるニシヘルマンリクガメなどがいます。
亀は数億年の進化の過程で、さまざまな環境に適応して多様化してきました。しかし残念ながら現在、世界の亀の約60%が絶滅の危機に瀕しています。これは生息地の破壊、乱獲、気候変動などの人間活動が主な原因とされています。
ペットとしての亀:魅力と飼育の基本

亀は長い歴史の中でペットとして親しまれてきました。「亀 ペット」として飼育を考えている方のために、亀の魅力と基本的な飼育知識をご紹介します。
長く付き合える静かなペットとしての魅力
亀がペットとして人気がある理由はいくつかあります。まず、適切な飼育環境で数十年生きるため、長く付き合えるペットです。また、観察していると種や個体ごとの個性や行動パターンが見えてくる個性的な魅力があります。
比較的静かで強い臭いが少ないため、集合住宅でも飼いやすいという利点もあります。さらに、長年の飼育経験から基本的な飼育方法が確立されているので、正しい知識を得れば初心者でも飼育しやすいペットです。
初心者におすすめの亀の種類と選び方
亀の飼育を始めるなら、日本の在来種で丈夫なクサガメや、日本の在来種で美しい甲羅を持つイシガメがおすすめです。ただし、イシガメはやや飼育難易度が高いため注意が必要です。
外来種である「ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)」は2020年から特定外来生物に指定され、新たに購入・譲渡することはできなくなりました。すでに飼育している場合は、適切な飼育を継続することが認められています。
ペットショップやブリーダーから亀を購入する際は、活発に動く個体を選びましょう。目がはっきりしており、腫れや分泌物がないこと、甲羅に異常(軟化、変形、カビなど)がないこと、呼吸に問題がなく口を開けて呼吸していないこと、肢や尾に異常がないことを確認することが大切です。
長寿命を考慮した長期的な飼育計画
亀を飼う際には、その長寿命と成長を考慮した長期的な計画が必要です。ミドリガメは平均寿命が約40年で、甲長は20〜30cmほどになります。クサガメは20〜40年生き、甲長は20cmほどになります。イシガメは15〜30年生き、甲長は15cmほどになります。リクガメは種類によりますが、50〜100年以上生きる種もあり、大型種は甲長が80cmを超えることもあります。
亀は一生涯成長を続けるため、特に最初の数年間は成長が早く、飼育環境の拡張が必要になることを念頭に置いておきましょう。「この子と一緒に歳を取る」という気持ちで、長期的な視点で飼育を考えることが大切です。
亀の適切な飼育環境:水槽セットアップから日常のケアまで

亀を健康に長く飼育するためには、適切な環境づくりが欠かせません。ここでは亀の種類に合わせた飼育環境の作り方を解説します。
水棲・半水棲の亀のための理想的な水槽環境
水棲や半水棲の亀(ミドリガメ、クサガメ、イシガメなど)を飼育する際は、亀の甲長の5〜10倍の水槽が理想的です。例えば、甲長5cmの亀なら最低でも横幅25cm以上の水槽が必要です。成長を考慮すると、最初から大きめの水槽を用意するのがおすすめです。複数飼育する場合は、さらに大きな水槽が必要になります。
必要な設備としては、亀は水を汚しやすいため強力な水フィルターが必要です。また、ビタミンD3の合成と甲羅の健康維持に不可欠なUVライト、日光浴(甲羅干し)ができる陸地部分(バスキングスポット)、適切な水温管理のための水温計、冬季など水温が下がる時期に使用する水中ヒーター、隠れ家となる装飾、床材(大きめの砂利や川砂)が必要です。小さすぎる砂利は誤飲の危険があるので注意しましょう。
水質と水温の管理も重要です。水深は亀の甲長の1.5〜2倍程度が適切で、水温は一般的に23〜28℃が適温です(種によって異なります)。水換えは週に1〜2回、全体の1/3程度の水を交換し、フィルターのメンテナンスは月に1回程度の掃除が必要です。
バスキングエリアの設定も忘れてはいけません。温度は30〜35℃程度を維持し(バスキングライトで調整)、日光浴スポットにUVB(紫外線B波)を照射する専用ライトを設置します。また、水から簡単に上がれる傾斜と十分な広さを確保した乾燥した陸地が必要です。
陸棲の亀(リクガメ)のための居住空間の整備
リクガメ類の飼育には、水棲種とは異なる環境が必要です。飼育ケージは甲長の5倍以上の面積が理想的です。床材はココナッツチップ、サイプレスマルチ、オーチャードバークなど、保湿性と通気性のバランスが良いものを使用します。
ケージ内には温度勾配を作り、温かい場所と涼しい場所を作ることで亀が体温調節できるようにします。また、プラスチック製の隠れ家や植物の鉢などを設置して、亀が身を隠せる場所を作ることも大切です。
温度と湿度の管理も重要です。日中温度は25〜30℃(種による)、バスキングスポットは30〜35℃、夜間温度は20〜25℃が適切です。湿度は種によって異なりますが、一般的に40〜60%(熱帯種はより高湿度が必要)を保ちます。
気候が温暖な地域では、リクガメの屋外飼育も可能です。その場合は、深さのある柵や囲いを設置して脱走を防止し、猫や鳥などの捕食者から守るための保護対策を講じます。また、雨風をしのげる場所や、可能であれば自然な採食環境として多様な餌植物を用意するとよいでしょう。
亀の食事と栄養:健康を支える正しい餌の与え方

亀の健康を維持するためには、種類に適した適切な食事を与えることが重要です。亀の種類によって食性は大きく異なります。
亀の種類別の食性と適切な栄養バランス
水棲・半水棲の亀(ミドリガメ、クサガメ、イシガメなど)は主に雑食性です。幼体は動物性タンパク質の割合が多く(60〜70%)、成体になるにつれて植物性食品の割合が増えます(50〜60%)。一方、多くのリクガメは草食性で、食事の80〜90%は植物性食品から摂取します。一部の種では少量のタンパク質を補助的に与えることもあります。
水棲・半水棲の亀に与えてよい動物性食品としては、亀用ペレット(基本食)、小魚(乾燥メダカ、小エビなど)、ミルワーム(少量)、茹でた鶏肉(少量、脂肪分の少ない部位)などがあります。植物性食品としては、水草(アナカリス、マツモなど)、野菜(キャベツ、小松菜、にんじん、かぼちゃなど)、水生植物(ホテイアオイなど)が適しています。
リクガメ向けの基本的な植物性食品としては、牧草(チモシー、アルファルファなど)、野菜(小松菜、チンゲン菜、にんじん、かぼちゃなど)、野草(タンポポ、クローバーなど)、果物(少量:りんご、いちごなど)が挙げられます。
与えてはいけない食べ物と適切な給餌スケジュール
以下の食品は亀に与えないようにしましょう。高タンパク質の肉類(特にリクガメ)は腎臓に負担がかかります。乳製品は亀の消化系には適しません。柑橘類は酸性が強すぎます。アボカドは毒性があります。加工食品は塩分や添加物が有害です。犬猫用ペットフードは栄養バランスが亀に適していません。
適切な給餌頻度と量も重要です。水棲・半水棲の亀の幼体は毎日1〜2回、成体は2〜3日に1回の給餌が適切です。量は5分以内に食べきれる量にします。過剰給餌は水質悪化の原因になるので注意しましょう。リクガメの幼体は毎日、成体は2〜3日に1回の給餌が適切です。量は甲羅の大きさに相当する量の野菜や草を目安にします。
亀の健康維持に欠かせないサプリメント
亀の健康維持には以下のサプリメントが有効です。特に成長期の亀に重要なカルシウムは週に2〜3回、マルチビタミンは週に1回程度、海から遠い地域で飼育する場合はヨードも必要です。これらのサプリメントは、餌に振りかけるか、専用の製品を使用します。
適切な栄養管理は亀の健康と長寿の鍵です。種類に合った食事内容と給餌スケジュールを守り、必要に応じてサプリメントを与えることで、亀の健康を長期的に維持することができます。
亀の健康管理と疾病予防:長生きのための注意点

亀は適切な飼育環境と栄養管理で長寿を全うできますが、健康管理を怠ると様々な病気にかかることがあります。ここでは亀の健康状態の見分け方と一般的な病気について解説します。
健康な亀の見分け方と定期的な観察ポイント
健康な亀には明確な特徴があります。環境温度が適切であれば積極的に動き回り、定期的な給餌に反応して餌を積極的に食べます。目が澄んでいて鼻水などの症状がなく、甲羅が硬く光沢があり、泳ぎや歩行に不自然さがありません。
亀の健康状態を定期的に観察することが大切です。特に甲羅の状態、目や鼻の様子、動きの活発さ、食欲などをチェックしましょう。異常を早期に発見できれば、適切な処置で重症化を防ぐことができます。
亀がかかりやすい病気の予防と早期対応
亀がかかりやすい病気として、甲羅の軟化症があります。これはカルシウム不足や不適切なUVB照射により発症します。症状としては甲羅が柔らかくなる、変形するなどがあります。予防には適切なUVB照射、カルシウムサプリメントの給与、バランスのとれた食事が重要です。治療には獣医師の指導のもと、カルシウム補給とUVB照射環境の改善が必要です。
また、目の腫れ(眼瞼炎)も多く見られます。これは水質悪化やビタミンA不足により発症することが多いです。症状としては目が腫れる、閉じている、分泌物があるなどがあります。予防には適切な水質管理とバランスのとれた食事が重要です。治療には獣医師による抗生物質の処方と水質改善が必要です。
呼吸器感染症は低温環境や不適切な湿度管理により発症します。症状としては口を開けて呼吸する、泡状の分泌物が出る、活動量の低下などがあります。予防には適切な温度管理と清潔な環境維持が重要です。治療には獣医師による抗生物質の処方と環境改善が必要です。
栄養不足・過多は不適切な食事管理によるものです。症状としては体重減少または異常な体重増加、甲羅の異常成長などがあります。予防には種に合った適切な食事管理が重要です。治療には食事内容の見直しが必要で、場合によっては獣医師の指導を受けましょう。
冬眠と甲羅のケアについて知っておくべきこと
日本の在来種(クサガメ、イシガメなど)は自然環境では冬眠します。ペット飼育下では冬眠させない選択も可能です(室内で適温を維持)。冬眠させる場合は、体重や健康状態のチェック、適切な冬眠環境の準備が必要です。冬眠前の準備として餌止め期間を設け、消化管を空にすることが大切です。冬眠温度は5〜10℃が適温ですが、種によって異なります。
亀の甲羅は健康状態を示すバロメーターです。定期的に変色、軟化、異常な成長がないかチェックし、必要に応じて柔らかいブラシで優しく汚れを落とします。ただし、頻繁な洗浄は不要です。UVB照射は甲羅の健康維持に重要で、水棲種は清潔な水環境が甲羅の健康に直結します。
可能であれば年に1回程度、爬虫類に詳しい獣医師による健康診断を受けることをお勧めします。特に食欲不振が3日以上続く、明らかな行動の変化(活動量の低下など)、目や鼻からの分泌物、甲羅の異常(軟化、変形など)、排泄の異常がある場合は速やかに受診しましょう。
責任ある亀の飼育:法規制と環境保全

亀を飼育する際には、法律や環境保全の観点からも責任ある行動が求められます。特に近年、外来種問題が深刻化しており、飼育者の意識が重要です。
外来種問題とペット飼育における法的責任
かつてペットとして大量に輸入されたミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は、2020年から特定外来生物に指定されました。これにより、新規の購入・譲渡は禁止されています。すでに飼育している場合は、最後まで責任を持って飼育することが義務付けられています。ペットの亀を野外に放つことは絶対にしてはいけません。在来種との競合や生態系への悪影響を引き起こす可能性があるためです。
また、カミツキガメやワニガメなどの大型種も特定外来生物に指定されています。これらの種は攻撃性が強く危険な場合もあり、特別な許可なく飼育することは法律違反となります。亀を飼育する際は、その種が法的に飼育可能かどうかを事前に確認することが重要です。
亀の保全状況と希少種の保護
世界の亀の多くは絶滅の危機に瀕しています。IUCNのレッドリストによると、亀類は脊椎動物の中でも特に絶滅リスクが高いグループの一つです。ワシントン条約(CITES)によって国際取引が規制されている種も多く、希少種の不正な取引は厳しく取り締まられています。
日本の在来種であるニホンイシガメやヤンバルイシガメなどは生息数が減少し、絶滅危惧種に指定されています。これらの種を野生から捕獲することは法律で制限されており、ペットとして購入する場合は合法的に繁殖された個体かどうかを確認することが大切です。
長期的な飼育計画と終生飼育の責任
亀は非常に長寿のため、飼い始める前に終生飼育の覚悟を持つことが重要です。数十年という長期間にわたる飼育責任を考慮し、将来の生活変化(引っ越し、家族構成の変化など)も想定した上で飼育を検討しましょう。
飼育が困難になった場合でも、野外に放したり無責任に手放したりするのではなく、爬虫類専門のショップや保護団体に相談するなど、適切な対処法を取ることが大切です。多くの地域では、不要になったエキゾチックペットの引き取り先や相談窓口が設けられています。
環境教育としての亀の飼育
亀の飼育は単なるペット飼育にとどまらず、生物多様性や環境保全について学ぶ良い機会となります。特に子どもたちにとっては、生き物への責任感や自然環境との関わりについて理解を深める教育的価値があります。
飼育を通じて亀の生態や進化の歴史、世界の亀が直面している保全上の課題などを学び、環境保全への意識を高めることができます。亀をペットにすることで「かわいい」という感情だけでなく、地球環境や生態系についての理解を深めることが理想的です。
よくある質問(FAQ)

亀の飼育や生態に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
- Q亀は爬虫類なのに水中で生活できるのはなぜですか?
- A
亀は爬虫類でありながら水中生活に適応した特殊な形態を持っています。多くの水棲亀は肺呼吸を行いますが、水中での酸素効率を高めるための特殊な適応をしています。例えば、一部の亀は総排泄腔(クロアカ)を通じて水中で酸素を取り込むことができます。また、水棲亀は流線型の体と発達した水かきを持ち、効率的に泳ぐことができます。これらの特徴は、爬虫類としての基本的な特性を保ちながら、長い進化の過程で水中生活に適応した結果です。
- Q亀の甲羅はどのように成長するのですか?
- A
亀の甲羅は亀の成長に合わせて大きくなります。甲羅は骨板と呼ばれる骨の部分と、その上に被さる甲板(角質板)と呼ばれるケラチン質の部分からなっています。骨板は亀の成長に合わせて大きくなりますが、甲板は皮膚のように脱皮するわけではなく、周縁部に新しい組織が追加されることで大きくなります。このため、甲羅には年輪のような成長線が見られます。また、甲羅の形状や成長パターンは種類によって異なります。
- Q亀はどれくらい長生きするのですか?
- A
亀の寿命は種類によって大きく異なります。小型の水棲亀は一般的に15〜40年程度生きます。例えば、ミドリガメ(アカミミガメ)は適切な飼育環境で40年前後、イシガメやクサガメは20〜30年程度です。一方、大型のリクガメは非常に長寿で、ガラパゴスゾウガメやアルダブラゾウガメなどは100年以上生きることもあります。最も長寿の記録は180歳を超えるとされています。
- Q亀のオスとメスはどうやって見分けるのですか?
- A
亀のオスとメスの見分け方は種類によって異なりますが、一般的には以下のような特徴があります。多くの種ではオスの方がメスより尾が長く太い傾向があります。これは生殖器がオスの尾の根元にあるためです。また、腹甲(腹側の甲羅)の形状にも違いがあり、オスは交尾を容易にするため中央部が凹んでいることが多いです。水棲亀の一部の種では、オスの前肢の爪が長く、求愛行動に使われます。ただし、これらの特徴は成熟した個体でないと判別が難しい場合があります。
- Q亀を飼うのに特別な許可は必要ですか?
- A
一般的な亀の多くは特別な許可なく飼育できますが、種類によっては法的な制限があります。特定外来生物に指定されているミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)、カミツキガメ、ワニガメなどは新規に購入・飼育することはできません。また、ワシントン条約(CITES)で保護されている希少種の場合、合法的な入手先からの購入であることを証明する書類が必要な場合があります。地域によっては、特定の種の飼育に許可が必要なこともあるため、購入前に確認することをお勧めします。
- Q亀は水中で呼吸できるのですか?
- A
亀は基本的には肺呼吸を行うため、定期的に水面に出て空気を吸う必要があります。しかし、一部の水棲亀は様々な方法で水中での酸素摂取を補助しています。例えば、アメリカスッポンモドキなどの亀は、総排泄腔(クロアカ)内の特殊な構造を通じて水中で溶存酸素を取り込むことができます(クロアカ呼吸)。また、冬眠中の亀は代謝が極めて低下するため、皮膚や咽頭を通じてわずかな酸素を吸収して何ヶ月も水中で過ごすことができます。しかし、通常の活動時には定期的に呼吸のために水面に出る必要があります。
終わりに:亀との共生を考える

亀は2億年以上にわたり地球上で生き続けてきた古代からの生存者です。その独特の生態や魅力的な特徴は、多くの人々を魅了してきました。ペットとして亀を飼育する際には、その長い進化の歴史と生物学的特性を理解し、適切な環境と栄養を提供することが重要です。
亀は単なるペットではなく、私たちとともに地球環境を共有する生き物の一員です。責任ある飼育と保全意識を持つことで、これらの素晴らしい爬虫類が今後も長く存続できるよう貢献しましょう。適切な知識と愛情を持って接することで、亀との豊かな共生関係を築くことができます。
亀は爬虫類であり、両生類ではないという事実は単なる分類上の問題ではなく、その生物学的特性や進化の歴史を理解する上での基礎となるものです。亀の甲羅、長寿命、特殊な呼吸法といった特徴は、陸上環境への適応として進化してきた爬虫類としての本質を物語っています。
亀を飼育する喜びと責任を理解し、これらの魅力的な生き物と共に過ごす時間を大切にしていただければ幸いです。