亀を飼育する上で、最も重要な要素の一つが水質管理です。適切な水質管理は、亀の健康と長寿に直結する重要な要素となります。
多くの飼育者が「水道水は使って大丈夫?」「カルキ抜きは必要?」といった疑問を抱えています。実は、これらの答えは飼育している亀の種類や成長段階によって大きく異なります。
クサガメやアカミミガメなどの一般的な種類は、水道水に対して比較的強い耐性を持っています。しかし、幼体や特殊な種類の亀を飼育する場合は、より慎重な水質管理が必要になります。
本記事では、獣医師の監修のもと、亀の種類別の適切な水質管理方法から、トラブル時の対処法まで、詳しく解説していきます。
参照:自然環境局 | 環境省
水道水の基礎知識と亀への影響

水道水に含まれるカルキの特徴と役割
水道水に含まれるカルキは、正式には次亜塩素酸カルシウムや次亜塩素酸ナトリウムと呼ばれる消毒剤です。日本の水道法では、水の消毒は塩素によることを基本と定められています。カルキの主な役割は水中の有害な細菌を殺菌することで、人々の健康を守ることにあります。
亀の種類別・水質への耐性の違い
亀の種類によって水道水への耐性は大きく異なります。クサガメやアカミミガメなどの一般的な種類は、水道水のカルキに対して比較的強い耐性を持っています。これらの種類は通常の水道水を直接使用しても深刻な問題は発生しにくいとされています。
一方で、日本イシガメなどの特定の種類は皮膚が敏感で、水道水のカルキによって皮膚のバリア機能がダメージを受けやすい特徴があります。また、スッポンは神経質な性格で特別な配慮が必要です。
幼体と成体での水質管理の違い
幼体期の亀は特に慎重な水質管理が必要です。クサガメは幼体期にはデリケートですが、成長に伴って丈夫になっていきます。幼体期には甲羅も柔らかく、環境の変化に敏感なため、水質管理には特別な注意が必要です。
成体の亀は幼体に比べて環境変化に強く、水質の変動にも比較的耐性があります。しかし、適切な水温管理は成体でも重要で、20℃から25℃の範囲を維持することが推奨されています。
水道水使用時の注意点とリスク
水道水を使用する際の最大の注意点は、カルキによる影響です。亀は水槽内の水を飲むため、水質管理は生命に直結する重要な要素となります。水道水を使用する場合、以下の点に注意が必要です。
水温管理も重要な要素で、特に冬場は注意が必要です。水温が18℃を下回ると消化機能が低下し、体調を崩す原因となります。また、急激な水温変化は亀にストレスを与えるため、水換え時には水温を合わせることが重要です。
水質の悪化は水カビ病などの皮膚感染症のリスクを高めます。定期的な水換えと適切なフィルター管理が、健康維持には不可欠です。特に幼体の場合は、最低でも3日に1回程度の水換えが推奨されています。
水道水を使用する場合、カルキ抜きの方法には注意が必要です。カルキ抜きの薬剤を使用する場合は、使用量を守ることが重要です。また、汲み置きによるカルキ抜きも有効な方法ですが、水温管理との両立が必要となります。
カルキ抜きの必要性と正しい方法

カルキ抜きが必要なケースと不要なケース
亀の飼育において、カルキ抜きの必要性は飼育する亀の種類や状態によって大きく異なります。クサガメやアカミミガメなどの一般的な種類は、通常の水道水に対して比較的強い耐性を持っています。これらの種類では、健康な成体であれば必ずしもカルキ抜きは必要ありません。
しかし、日本イシガメのような特殊な種類や、病気や怪我をしている個体、また幼体の場合は状況が異なります。幼体は特に環境変化に敏感で、水質の変動による影響を受けやすいため、必ずカルキ抜きを行う必要があります。また、皮膚病や怪我の治療中の個体についても、獣医師の指示に従い、カルキを完全に除去した水を使用することが推奨されます。
おすすめのカルキ抜き製品と選び方
カルキ抜き製品の選択は、亀の健康管理において重要な要素となります。テトラのコントラコロラインプラスは、カルキ除去だけでなく、ミネラルを含んでおり、水道水を自然の水に近づける効果があります。また、GEXのカルキ抜きは固形タイプで、保存が容易で場所を取らないという特徴があります。
セラアクアチューナーは、カルキの除去に加えて、重金属の無害化や亜硝酸塩の軽減効果も備えており、特に水質管理が重要な幼体の飼育に適しています。製品選びの際は、使用する水量に対する適切な使用量が明確に示されているものを選ぶことが重要です。
自然なカルキ抜き方法と所要時間
自然なカルキ抜き方法として最も一般的なのが、水道水の汲み置きです。初夏から夏の晴天時であれば、15リットル程度の水道水は2時間から半日でカルキ抜きが完了します。ただし、曇り空や寒い時期には、カルキが抜けにくくなるため、1日から2日程度の時間が必要となります。
もう一つの方法として、水道水の煮沸があります。フタをせずに15分以上沸騰させることで、効果的にカルキを除去することができます。ただし、この方法は一度に処理できる水量が限られるため、小規模な水換えや足し水程度の用途に適しています。
地域による水質の違いと対策方法
日本の水道水は地域によって特性が異なり、これは亀の飼育環境にも影響を与えます。特に関東地域、とりわけ千葉県では、主要な無機成分濃度が他地域より高い傾向にあります。このような地域差は、亀の健康管理において考慮すべき重要な要素となります。
水質の違いに対する対策として、まずは自身の居住地域の水質特性を把握することが重要です。水道水のpHは6.5から7.5の間に保つことが推奨されており、定期的な水質検査を行うことで安全な飼育環境を維持できます。また、地域によって水質が大きく異なる場合は、水質調整剤の使用を検討することも有効な対策となります。
効果的な水質管理テクニック

水質検査キットの使い方と測定項目
水質検査は亀の健康管理において重要な要素です。水質テストキットを使用することで、pH、亜硝酸塩、硝酸塩、塩素などの重要な項目を一度にチェックすることができます。テストキットの使用方法は非常に簡単で、試験紙の端をつまみ、先端のパット部分を水槽の水に約1秒浸すだけです。
水質検査の結果を記録することも大切です。スマートフォンアプリを活用すれば、検査結果を簡単に保存でき、水質の変化を継続的に観察することができます。定期的な水質検査により、水換えのタイミングを適切に判断できるようになります。
フィルターの選び方と設置方法
亀用フィルターの選択は水槽のサイズに合わせて行う必要があります。60cm以上の水槽には上部フィルターが推奨され、小さな水槽には投げ込み式フィルターが適しています。フィルターの水流が強すぎると亀にストレスを与えてしまうため、適切なサイズ選びが重要です。
上部フィルターは水槽の上部に設置し、高いろ過能力を発揮します。一方、外部フィルターは水槽の外に設置するため、見た目がすっきりとし、静音性にも優れています。スポンジフィルターは生物ろ過と物理ろ過の両方の役割を果たし、バクテリアの繁殖を促進する効果があります。
水草の活用による水質浄化効果
水草の活用については慎重な判断が必要です。亀の水槽に水草を入れることは、水質浄化効果よりもデメリットの方が大きいとされています。亀が水草を食べ散らかすことで水質が悪化し、フィルターの目詰まりを引き起こす可能性があります。
水草を入れる場合は、亀の種類や大きさ、水槽のサイズを考慮する必要があります。しかし、亀の飼育に必要なものは水槽、陸地の石、水、エサのみで十分であり、水草は必ずしも必要ではありません。
ミズカビ対策と予防法
ミズカビ対策の基本は適切な水質管理です。水カビの発生を防ぐためには、定期的な水換えと適切な水温管理が不可欠です。水温は28℃~30℃程度に保つことが推奨され、この温度帯は水カビの発生を抑制する効果があります。
予防策として、毎日の水換えを徹底し、フィルターの定期的な清掃を行うことが重要です。水カビが発生してしまった場合は、水槽やフィルターの徹底的な洗浄と天日干しが効果的です。また、亀の免疫力を高めるために、適切な栄養管理も重要です。乾燥したペレットだけでなく、活餌を与えることで免疫力を向上させることができます。
適切な水換えの手順とポイント

理想的な水換え頻度と量の目安
亀の水換えは飼育環境を清潔に保つための重要な作業です。標準的な水換え頻度は週1回程度で、水量の50%から70%を交換することが推奨されます。ただし、これは基本的な目安であり、亀の大きさや水槽の容量によって調整が必要です。
水槽の総水量が多いほど水質は安定します。60cm以上の水槽サイズを確保することで、水質の悪化を防ぎやすくなります。また、フィルターの性能や亀の活動量によっても適切な水換え頻度は変動します。
季節による水換えスケジュールの調整
冬季の水換えは特に慎重な対応が必要です。冬場は亀の体力が低下しやすい時期のため、水質管理の重要性が増します。寒い時期の水換えでは、必ず水温を適切に調整してから行うことが重要です。
夏季は水温上昇により細菌の増殖が活発になるため、より頻繁な水換えが必要となります。夏場は水温を28℃以下に維持し、必要に応じて水換えの頻度を増やすことが推奨されます。
水温管理のコツと注意点
水温管理は亀の健康維持に直結する重要な要素です。成体の亀が快適に過ごせる水温は25℃前後であり、20℃以下になると消化機能が低下するため注意が必要です。冬季は水槽用ヒーターを使用して適切な水温を維持します。
水換え時の水温調整には特に注意が必要です。急激な水温変化は亀にストレスを与え、体調不良の原因となります。新しい水は必ず水槽内の水温と同程度まで調整してから入れるようにしましょう。
緊急時の水質改善方法
水質が急激に悪化した場合は、即座な対応が必要です。緊急時は1日2回の水換えを行い、水温を通常より若干高めの35℃程度に保つことで、水質の改善を促進できます。
水質悪化の兆候として、水の濁りや不快な臭いの発生があります。このような症状が見られた場合、pHレベルを6.5以下に調整することで、有害な真菌の増殖を抑制することができます。また、フィルターの目詰まりも水質悪化の原因となるため、定期的な清掃と点検が重要です。
トラブル対応と予防策

よくある水質トラブルと解決方法
水質トラブルは亀の飼育において最も一般的な問題です。水が白濁したり異臭が発生する場合は、水質の急激な悪化を示すサインであり、即座の対応が必要です。この状態は主に餌の食べ残しや排泄物の蓄積が原因で起こります。
水質の改善には、まず水換えを行い、フィルターの清掃を実施します。ただし、一度に全ての水を交換するのは避け、50%から70%程度の部分的な水換えを行うことが推奨されます。これは水槽内の有益なバクテリアのバランスを保つためです。
病気予防のための水質管理
亀の健康維持には適切な水質管理が不可欠です。水質の悪化は水カビ病などの皮膚感染症を引き起こす主な原因となります。予防のためには、水温を25度以上に保ち、定期的な水質検査を実施することが重要です。
特に注意が必要なのは、アンモニアと硝酸塩の濃度です。これらの物質は亀の排泄物から生成され、高濃度になると亀の健康に深刻な影響を及ぼします。水質検査キットを使用して定期的にチェックし、アンモニアが検出された場合は即座に水換えを行う必要があります。
ストレスのない環境作りのコツ
亀のストレスを軽減するためには、適切な環境作りが重要です。静かで薄暗い場所を用意し、必要以上の観察や接触を避けることが、亀のストレス軽減につながります。また、水温の急激な変化も大きなストレス要因となるため、水換え時には必ず水温を合わせることが必要です。
適切な日光浴の機会も重要です。ただし、直射日光は避け、適度な日陰を作ることで、亀が自然な形で体温調節できる環境を整えましょう。水槽内には隠れ場所を設置し、亀が必要に応じて休息できるスペースを確保することも大切です。
専門家に相談すべき症状と時期
亀の健康状態に異変を感じた場合は、早めの専門家への相談が推奨されます。食欲不振や活動量の低下、呼吸が荒くなる、目を閉じたままの状態が続くなどの症状が見られた場合は、すぐに獣医師の診察を受けるべきです。
特に口内炎の症状が見られた場合は要注意です。これは単なる炎症ではなく、ウイルス性の感染症である可能性があり、適切な治療が必要です。また、卵詰まりの症状が見られた場合も、内臓が圧迫され重篤な状態に陥る可能性があるため、早急な診察が必要となります。
よくある質問(FAQ)

水道水で亀を直接洗っても大丈夫?
亀を水道水で直接洗うことは推奨されません。水道水に含まれるカルキは亀の皮膚や粘膜を刺激する可能性があり、特に幼体や病気の個体には悪影響を及ぼす可能性があります。亀の体を洗う必要がある場合は、必ずカルキ抜きをした水を使用しましょう。
ミネラルウォーターは使用可能?
ミネラルウォーターの使用は避けるべきです。ミネラルウォーターは水質が商品によって大きく異なり、亀の飼育に適さない成分が含まれている可能性があります。また、殺菌目的のカルキが含まれていないため、雑菌が繁殖しやすい環境となります。コスト面からも、カルキ抜きした水道水の使用が最適です。
水質調整剤は必ず必要?
水質調整剤の使用は状況によって判断が必要です。クサガメやアカミミガメなどの一般的な種類の成体であれば、必ずしも水質調整剤は必要ありません。しかし、幼体や特殊な種類、また病気や怪我をしている個体の場合は、水質調整剤の使用が推奨されます。
お湯での水換えは避けるべき?
お湯での直接的な水換えは絶対に避けるべきです。急激な水温変化は亀にストレスを与え、体調不良の原因となります。水換え時は、新しい水を必ず水槽内の水温と同程度まで調整してから入れるようにしましょう。特に夏場は、日光に当てた水が高温になっている可能性があるため、注意が必要です。
水が早く汚れる原因と対処法は?
水が早く汚れる主な原因は、餌の食べ残しや排泄物の蓄積です。水質悪化を防ぐためには、適切なフィルター管理と定期的な水換えが不可欠です。フィルターの能力に頼りすぎず、週に1回程度の定期的な水換えを基本とし、水槽の状態に応じて頻度を調整することが重要です。
また、水槽のサイズも重要な要素となります。60cm以上の水槽サイズを確保することで、水質の安定性が増し、汚れにくい環境を作ることができます。砂利の使用も水質の安定に効果的で、バクテリアの定着を促進し、生物ろ過の効果を高めることができます。
まとめ:亀の水質管理

亀の健康的な飼育には、適切な水質管理が不可欠です。水道水の使用は、亀の種類や成長段階に応じて慎重に判断する必要があります。クサガメやアカミミガメなどの一般的な種類の成体であれば、通常の水道水でも問題ありませんが、幼体や特殊な種類の場合は、カルキ抜きなどの対策が必要となります。
水質管理の基本は、定期的な水換えとフィルター管理です。週1回程度の50-70%の水換えを基本とし、水温は25℃前後に維持することが推奨されます。また、水質検査キットを使用した定期的なチェックも重要で、特にアンモニアと硝酸塩の濃度には注意が必要です。
トラブルを未然に防ぐためには、適切な水槽サイズの確保も重要です。60cm以上の水槽を使用することで、水質が安定し、亀にとって快適な環境を維持しやすくなります。また、フィルターの選択も重要で、水槽サイズに合わせた適切な能力のものを選ぶことが大切です。