参照:特定外来生物等一覧 | 日本の外来種対策 | 外来生物法

クサガメの基礎知識と現状の悩み

クサガメを見つけたときの不安と疑問
「クサガメって飼育しても大丈夫?」「道端で見かけたけど、連れて帰ってもいいの?」。最近、アカミミガメ(ミドリガメ)やアメリカザリガニが外来生物法の規制対象となったことで、クサガメについても同じような規制があるのではと不安に感じている方が増えています。
特に、ペットショップでクサガメを見かけたり、子どもが川遊びで捕まえてきたりしたとき、「これって法律的に問題ないの?」と悩む方も多いでしょう。
クサガメとはどんな生き物か
クサガメ(Mauremys reevesii)は、日本の池や川、沼などでよく見かけるカメです。甲羅の長さは15〜25cmほどで、オリーブ褐色から黒褐色の甲羅には3本の隆起線が走っています。首や足に黄緑色の線が入っているのが特徴で、これが「草亀」という和名の由来です。
かつては日本の在来種と考えられていましたが、近年の研究で江戸時代後期に朝鮮半島から持ち込まれた外来種である可能性が高いことが分かってきました。
クサガメの寿命や生態
クサガメは非常に長寿な生き物で、自然下では20年から30年、飼育下では40年以上生きることも珍しくありません。人間の年齢に換算すると、10歳で28歳、20歳で68歳、30歳で108歳にも相当すると言われています。
雑食性で、水草や昆虫、小魚、エビなどさまざまなものを食べます。飼育下では市販のカメ用フードを中心に、時折野菜や生餌を与えると健康に育ちます。
クサガメとサルモネラ菌のリスク
クサガメを含むカメ類は、サルモネラ菌を高い確率で保有しています。国内外の研究では、ハ虫類の50〜90%がサルモネラ菌を持っているとされ、実際にペットのカメから人に感染した事例も報告されています。
特に小さなお子さんや高齢者がいる家庭では、カメの世話をした後は必ず石けんで手を洗うなど、衛生管理に十分注意する必要があります。
クサガメの外来種問題と規制の現状

クサガメは外来種?在来種?その歴史的背景
かつてクサガメは日本の在来種と考えられていましたが、化石や遺跡からの出土例がほとんどなく、DNA解析でも韓国産と同じタイプが多いことから、現在では江戸時代後期に持ち込まれた外来種とする見解が主流です。文献にも18世紀以降にしか登場しないことから、長い間日本の水辺に定着してきた「古い外来種」と位置付けられています。
クサガメが問題視される理由
クサガメが問題視される最大の理由は、在来種であるニホンイシガメとの交雑です。両者が交雑して生まれる「ウンキュウ」と呼ばれる雑種は繁殖能力を持ち、純粋なイシガメの減少を招いています。また、ペットとして飼われていた個体が遺棄されることで、地域の生態系にさらなる影響を及ぼすことも懸念されています。
クサガメと外来生物法の関係
外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)は、主に明治以降に日本に持ち込まれた侵略的外来種を規制対象としています。
クサガメは江戸時代に導入されたとされるため、現時点(2025年5月)ではこの法律の規制対象にはなっていません。ただし、今後生態系への影響や研究の進展によっては、規制対象となる可能性も否定できません。
クサガメと他の規制対象種の違い
2023年6月1日からアカミミガメ(ミドリガメ)やアメリカザリガニが「条件付特定外来生物」に指定され、飼育や販売、輸入、放流などが原則禁止となりました。これにより、「クサガメも同じように規制されるのでは?」という不安が広がっています。
しかし、クサガメは現時点で条件付特定外来生物や特定外来生物には指定されていません。なお、ハナガメとクサガメの交雑種は特定外来生物として規制されています。
主なカメ類の規制状況(2025年5月現在)
種名 | 規制区分 | 飼育の可否 | 備考 |
---|---|---|---|
クサガメ | 規制なし | 可 | ただし今後規制の可能性あり |
アカミミガメ | 条件付特定外来生物 | 条件付き可 | 新規飼育・販売・輸入は禁止 |
ハナガメ×クサガメ交雑 | 特定外来生物 | 不可 | 飼育・譲渡・販売・輸入すべて禁止 |
ニホンイシガメ | 在来種 | 可 | 保護対象、野外採集は地域で制限あり |
クサガメを見つけた・飼っている場合の正しい対応

クサガメを野外で見つけたら
もし川や池、道端などでクサガメを見つけた場合、基本的にはそのままにしておくのが最善です。野生動物の捕獲は地域の条例で制限されている場合があり、また生態系への影響も考慮しなければいけません。
観察目的で一時的に持ち帰る場合でも、必ず元の場所に戻すことを心がけてください。どうしても対応に迷う場合は、自治体の環境担当課や環境省の相談窓口に連絡し、指示を仰ぐのが安心です。
クサガメを飼育する際の注意点
クサガメをペットとして飼育する場合、まず大切なのは最後まで責任を持って飼う覚悟です。クサガメは20〜40年も生きるため、途中で飼えなくなると遺棄や放流につながり、深刻な環境問題を引き起こします。
飼育環境としては、成体には60cm以上の水槽が必要で、水質管理や日光浴のための陸地スペースも欠かせません。餌は市販のカメ用フードを中心に、野菜や小魚などもバランスよく与えます。水換えや水槽の掃除を怠るとサルモネラ菌のリスクが高まるため、衛生管理を徹底しましょう。
飼育できなくなった場合の対応方法
どうしても飼い続けることができなくなった場合、絶対に野外に放さないことが鉄則です。放流は生態系の撹乱や在来種との交雑を招くだけでなく、外来生物法違反となる可能性もあります。
まずは知人や友人で新しい飼い主を探し、それが難しい場合はペットショップやカメの引き取り団体、動物愛護センターなどに相談しましょう。自治体によっては相談窓口や引き取り制度が設けられている場合もあります。
自治体・環境省への相談と届出
クサガメに関する具体的な規制や対応方法は、地域によって異なる場合があります。特に野生動物の捕獲や飼育に関する条例がある自治体も多いため、疑問がある場合は環境省の公式サイトや、お住まいの市区町村の環境担当課に問い合わせることをおすすめします。
クサガメ飼育と放流がもたらす環境・法的リスク

クサガメ放流の環境影響
クサガメを野外に放すと、在来種であるニホンイシガメとの交雑が進み、純粋なイシガメが減少する恐れがあります。さらに、クサガメは雑食性で繁殖力も高いため、地域の水生生物や水草に大きな影響を与えることが知られています。こうした生態系への負荷は、結果的に日本本来の自然環境を損なうことにつながります。
法的リスクと今後の規制動向
現時点でクサガメは法的な飼育禁止対象ではありませんが、今後生態系への影響が深刻化した場合、アカミミガメのように条件付特定外来生物や特定外来生物に指定される可能性があります。
実際、ハナガメ×クサガメの交雑種はすでに特定外来生物として厳しく規制されています。もしクサガメが特定外来生物に指定された場合、飼育や譲渡、販売、輸入、放流などが全面的に禁止されることになります。
ミドリガメ(アカミミガメ)との違い
アカミミガメ(ミドリガメ)は2023年6月から条件付特定外来生物に指定され、既存の飼育個体は手続きなしで飼い続けられるものの、新たな飼育や販売、輸入は原則禁止となっています。クサガメは現時点でこのような規制対象ではありませんが、社会的な関心や生態系への影響次第で今後規制が強化される可能性も否定できません。
FAQ:クサガメ飼育と規制に関するよくある質問

- Qクサガメは今すぐ飼育禁止になりますか?
- A
2025年5月現在、クサガメは法律で飼育禁止にはなっていません。 ただし、地域の条例や今後の法改正によって規制される可能性もあるため、最新情報は必ず自治体や環境省の公式サイトでご確認ください。
- Qクサガメを野外で見つけた場合、持ち帰っても大丈夫ですか?
- A
基本的には自然のままにしておくのが望ましいです。野生動物の捕獲は地域の条例で制限されている場合があり、生態系への影響も考慮する必要があります。どうしても持ち帰りたい場合は、必ず自治体に相談しましょう。
- Qクサガメを飼えなくなった場合、どうすればいいですか?
- A
絶対に野外に放さず、まずは新しい飼い主を探すことが大切です。知人や友人、ペットショップ、動物愛護センターなどに相談し、それでも難しい場合は自治体の相談窓口を利用してください。
- Qクサガメはミドリガメ(アカミミガメ)と同じように規制される可能性がありますか?
- A
現時点では規制対象ではありませんが、今後生態系への影響や社会的な関心が高まれば、アカミミガメ同様に規制される可能性もあります。常に最新情報をチェックしましょう。
- Qクサガメとイシガメの見分け方は?
- A
クサガメは甲羅が平たく3本の隆起線が明瞭で、首や足に黄緑色の線があります。一方、イシガメは甲羅が丸みを帯びており、隆起線が不明瞭です。
まとめ:クサガメと共に生きるために

クサガメは日本の水辺で長く親しまれてきた生き物ですが、そのルーツや生態系への影響が明らかになるにつれ、外来種としての問題も浮き彫りになってきました。 現時点では法律で飼育禁止にはなっていませんが、今後の研究や社会的な動向によっては規制が強化される可能性もあります。クサガメを飼育する際は、20〜40年という長い寿命を見据え、最後まで責任を持つことが求められます。もし飼えなくなった場合は絶対に放流せず、新しい飼い主や専門機関への相談を徹底しましょう。
また、クサガメを野外で見かけたときは、安易に持ち帰らず、そのままにしておくことが自然環境を守る第一歩です。今後も環境省や自治体の公式情報を定期的に確認し、変化する法規制に柔軟に対応できるよう心がけてください。クサガメと人間社会が共存できる未来のために、私たち一人ひとりが正しい知識と行動を持つことが何より大切です。