ヤモリを飼い始めた方なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。「あ、庭にダンゴムシがいるじゃん!これって餌になるのかな?」なんて。確かに、ペットショップでコオロギを買うのは面倒だし、お金もかかりますもんね。
でも実は、ダンゴムシをヤモリの餌として使うには、知っておかないと危険なことがいくつかあるんです。「えっ、そうなの?」と思われた方、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事では、ヤモリの餌としてのダンゴムシの真実から、家にあるもので代用できる餌、さらには市販のおすすめ餌まで、ヤモリ飼育のプロが詳しく解説していきます。大切なヤモリちゃんの健康を守るために、一緒に正しい知識を身につけていきましょう!

そもそも、ヤモリはダンゴムシを食べてくれるの?
実は、ヤモリはダンゴムシが苦手なんです
いきなり残念なお知らせですが、ヤモリはダンゴムシをあまり好んで食べません。「えー、なんで?昆虫なのに?」と思うかもしれませんが、理由があるんです。
多くのヤモリ飼育者の体験談を聞いてみると、「ダンゴムシを入れてみたけど、全然食べなかった」「むしろ避けてる感じだった」なんて声がたくさん聞こえてきます。
実際に飼育していたヤモリにダンゴムシを与えた方の話では、「ダンゴムシがまるまると、ヤモリには小石のように固く感じるらしくて、全然食べてくれませんでした」とのこと。なるほど、確かにダンゴムシって触ると結構硬いですもんね。
ヤモリが好きな餌の特徴って?
ヤモリが好む餌には、実はちゃんとした特徴があります。ニホンヤモリの場合、柔らかくてプニプニした昆虫が大好物なんです。例えば、カタツムリやイモムシ、それから蛾なんかが自然界では主食になっています。
一方で、野生のヤモリの生活を考えてみると面白いことが分かります。ヤモリは主に壁や天井を這って生活していますが、ダンゴムシは地面をゴソゴソ這い回っていますよね。つまり、生活している場所が全然違うんです。これじゃあ、自然界でヤモリがダンゴムシと出会うチャンスはほとんどないわけです。
栄養面から見たダンゴムシの問題点
仮にヤモリがダンゴムシを食べてくれたとしても、栄養面で心配なことがあります。ダンゴムシはカルシウムは豊富に含んでいるんですが、その分タンパク質のバランスが偏ってしまう傾向があるんです。
「じゃあ、カルシウムが多いなら骨にいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、栄養って案外複雑で、一つの栄養素だけが多くても、他の栄養素とのバランスが取れていないと、かえって健康に良くないことがあります。
ダンゴムシを与える時の危険性について
消化の問題
ダンゴムシの一番の問題は、なんといってもあの硬い殻です。ヤモリの小さな体と消化器官を考えてみてください。人間だって、硬いものを食べすぎるとお腹を壊しますよね。ヤモリにとって、ダンゴムシの硬い外殻は消化に大きな負担をかけてしまうんです。
特に、ダンゴムシが危険を感じてまん丸に丸まった状態では、もう完全に小さなボールのようになってしまいます。これでは、ヤモリが飲み込むのも一苦労ですし、たとえ飲み込めたとしても、胃や腸に負担をかけてしまいます。
野生のダンゴムシのリスク
庭や公園で採取したダンゴムシには、実は見えない危険がたくさん潜んでいます。
農薬の問題が一番怖いところです。最近の農薬や除草剤は効果が高い分、昆虫の体内に蓄積されやすくなっています。ダンゴムシは土の中で生活しているので、こうした化学物質を体内に溜め込んでいる可能性が高いんです。
それから、寄生虫や細菌の感染リスクも無視できません。野生の昆虫には、ヤモリに害を与える可能性のある寄生虫が住み着いていることがあります。「ちょっとくらい大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、ヤモリは体が小さいので、人間なら平気な程度の感染でも、重篤な症状を引き起こしてしまうことがあるんです。
どうしても与える場合の注意点
それでも「ダンゴムシしかない!」という緊急事態の場合は、以下の点に気をつけてください。
まず、できるだけ小さくて柔らかそうなダンゴムシを選ぶこと。大きな成体のダンゴムシは絶対に避けてください。次に、絶対に主食にしないこと。あくまでも緊急時の一時的な代用として、他の餌と組み合わせて使うにとどめましょう。
そして何より大切なのは、できるだけ早く適切な餌を用意することです。ダンゴムシはあくまでも「つなぎ」程度に考えておいてくださいね。
ヤモリにおすすめの定番餌
コオロギは王道中の王道
ヤモリの餌といえば、やっぱりコオロギが一番のおすすめです。特に「ヨーロッパイエコオロギ」は、ヤモリ飼育者の間では「コオロギといえばこれ!」と言われるほど定番の餌です。
なぜコオロギがこんなに人気なのかというと、まず栄養バランスが抜群なことが挙げられます。タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルが程よく含まれていて、ヤモリにとってはまさに「完全栄養食」に近い存在なんです。
それに、コオロギは比較的飼育も簡単で、ペットショップでも手に入りやすいのが嬉しいポイント。「虫を飼うなんて無理!」と思うかもしれませんが、コオロギ飼育は思っているより簡単ですよ。
ミルワームは高カロリー食材
ミルワームは、ヤモリの餌としてはコオロギに次ぐ人気を誇っています。高タンパクで栄養満点なので、特に成長期のヤモリにはぴったりの餌です。
ただし、ミルワームには一つ注意点があります。それはカロリーが高すぎること。人間だって、毎日ステーキばかり食べていたら太ってしまいますよね。ヤモリも同じで、ミルワームばかり与えていると肥満になってしまう可能性があるんです。
そこで、ミルワームは「おやつ」として考えるのがおすすめ。子供の頃はたくさん与えても大丈夫ですが、大人になったら週に1〜2回程度のスペシャルおやつとして与えるのがベストです。
昆虫ゼリーの上手な使い方
「昆虫ゼリーって、ヤモリも食べるの?」とよく聞かれます。答えは「食べるけれど、主食にはならない」です。
昆虫ゼリーの一番の魅力は水分補給ができること。特に乾燥しがちな冬場や、エアコンを使っている部屋では、ヤモリの水分補給に大活躍してくれます。
ただし、昆虫ゼリーは主にカブトムシやクワガタ用に作られているので、ヤモリにとっては栄養が偏ってしまいます。「昆虫ゼリーだけで飼えたら楽なのに」と思う気持ちも分かりますが、あくまでも補助的な餌として使うのが正解です。
緊急時に使える家にあるもの
かつおぶしは使える?注意点は?
「コオロギを切らしちゃった!何か家にあるもので代用できないかな?」という時、かつおぶしを思い浮かべる方も多いと思います。
実は、かつおぶしはヤモリにとって悪い餌ではありません。タンパク質やアミノ酸が豊富で、特にタウリンやDHAなどの栄養素はヤモリの目や脳の健康にも良いとされています。
でも、大きな問題が一つあります。それは塩分です。市販のかつおぶしのほとんどには塩分が含まれていて、これがヤモリには負担になってしまうんです。
もしかつおぶしを与える場合は、無塩のものを選んで、ほんの少量だけにしてください。そして、あくまでも緊急時の一時的な代用として使い、できるだけ早く適切な餌を用意することが大切です。
バナナなどの果物について
「ヤモリって果物食べるの?」という質問もよくいただきます。意外に思われるかもしれませんが、バナナなどの甘い果物は、ヤモリが興味を示すことがあります。
ただし、これもあくまでも補助的な餌として考えてください。果物は糖分が高いので、与えすぎると肥満の原因になってしまいます。それに、野生のニホンヤモリは基本的に肉食なので、果物だけでは必要な栄養を摂ることができません。
バナナを与える場合は、農薬をしっかり洗い流して、小さくカットしてから与えてくださいね。
ハムや肉類の注意点
「ハムとか肉なら、タンパク質豊富だし大丈夫でしょ?」と思うかもしれませんが、これはちょっと注意が必要です。
確かに、生の鶏肉などは、ピンセットで動きをつけて与えると食べてくれることがあります。でも、人間用に加工された肉類には、ヤモリにとって有害な添加物や塩分が含まれていることが多いんです。
特にハムやソーセージなどの加工肉は、塩分や保存料がたっぷり使われているので、ヤモリには向いていません。どうしても肉類を与える場合は、新鮮な生肉を無調味料で、ごく少量だけにしてください。
知っておきたいヤモリの餌の基本知識
ヤモリが好む虫の条件
ヤモリ飼育を成功させるためには、「どんな虫が好きなのか」を理解することが大切です。長年の飼育経験から分かってきた、ヤモリが好む虫の条件をご紹介しますね。
まず、体が柔らかいことが絶対条件です。バッタの幼虫、小さなクモ、蛾、ミミズ、イモムシなどは、ヤモリが喜んで食べてくれます。逆に、カナブンやダンゴムシのような硬い外殻を持つ昆虫は、ほとんど食べてくれません。
次に、サイズも重要なポイント。目安として、ヤモリの頭の4分の1以下のサイズが適切です。人間だって、口に入らないほど大きなものは食べられませんよね。
そして、動きがあることも大切な要素の一つ。ヤモリは動くものに反応する習性があるので、生きた昆虫や、ピンセットで動きをつけた餌の方が食いつきが良くなります。
危険なクル病を防ぐために
ヤモリ飼育で一番怖いのがクル病(くる病)という病気です。これは、カルシウムやビタミンB、ビタミンDが不足することで起こる病気で、骨が柔らかくなってしまい、最悪の場合は骨が変形してしまうこともあります。
実際にクル病になってしまったヤモリの症状を見ると、本当に心が痛みます。壁に張り付けなくなったり、指が反り返ったままになったり、尻尾がガクガクと曲がってしまったり…。
でも、安心してください。クル病は予防可能な病気です。一番効果的な予防法は、餌にカルシウムパウダーをまぶして与えること。市販の爬虫類用カルシウムパウダーを、コオロギやミルワームにふりかけるだけで、かなりのリスクを減らすことができます。
餌のバリエーションの大切さ
「毎日同じコオロギじゃダメなの?」という質問をよくいただきますが、やっぱりバリエーションは大切です。
人間だって、毎日同じメニューだと飽きてしまいますし、栄養も偏ってしまいますよね。ヤモリも同じで、いろいろな種類の餌を与えることで、栄養バランスが整い、飽きずに食べ続けてくれます。
理想的なローテーションとしては、メインをコオロギにして、週に1〜2回ミルワームや他の昆虫を与える感じでしょうか。そこに昆虫ゼリーを補助的に加えることで、水分補給もできて一石二鳥です。
現代の救世主:人工餌の活用法
人工餌って実際どうなの?
「虫を触るのはちょっと…」という方には、人工餌という強い味方があります。最近の人工餌は本当によくできていて、「これだけで本当に大丈夫?」と心配になるほど便利なんです。
特に人気なのがレオパドライやレオパブレンドフードといった商品。これらは元々レオパードゲッコー(ヒョウモントカゲモドキ)用に開発されたものですが、ニホンヤモリにも使えます。
人工餌の最大のメリットは、何といっても栄養バランスが完璧に計算されていること。カルシウム、ビタミン、ミネラルなど、ヤモリに必要な栄養素がすべて適切な量で配合されています。
人工餌の使い方のコツ
人工餌を使う時のポイントをいくつかご紹介しますね。
まず、ふやかし方が大切。レオパドライなら常温の水で3〜5分、レオパブレンドフードならぬるま湯で同じくらいの時間ふやかします。ふやかしすぎるとグズグズになってしまうので、「ちょっと芯が残ってるかな?」くらいで止めるのがコツです。
与える時は、ピンセットで動きをつけてヤモリの前に持っていってあげてください。人工餌は動かないので、ヤモリが「これは餌だ」と認識するまでに時間がかかることがあります。
個体差があることを理解しておこう
ただし、一つ注意していただきたいのは、すべてのヤモリが人工餌を食べてくれるわけではないということ。特にニホンヤモリは、生きた昆虫へのこだわりが強い傾向があります。
「人工餌を試してみたけど、全然食べてくれない」という話もよく聞きます。そんな時は無理をせず、生きた昆虫に戻してあげてください。ヤモリの健康が一番大切ですからね。
よくある質問にお答えします
- Qダンゴムシを捕まえて与えても本当にダメ?
- A
これは本当によく聞かれる質問です。答えは「おすすめしません」です。
理由はいくつかありますが、一番の問題はヤモリが食べたがらないこと。硬い外殻のダンゴムシは、ヤモリにとって「食べ物」として認識されにくいんです。
それに、野生のダンゴムシには農薬や寄生虫のリスクもあります。「ちょっとくらい大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、ヤモリの体は小さいので、ちょっとしたことでも大きな影響を受けてしまうんです。
- Q昆虫ゼリーだけで飼育できる?
- A
残念ながらできません。昆虫ゼリーは水分補給や栄養補助としては優秀ですが、ヤモリに必要なすべての栄養を満たすことはできません。
昆虫ゼリーは主に糖分と水分が中心で、ヤモリの成長に必要なタンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルなどが不足してしまいます。「昆虫ゼリーだけで飼えたら楽なのに」という気持ちは分かりますが、ヤモリの健康を考えると、やはり生きた昆虫や人工餌を主食にすることが大切です。
- Q虫が苦手でもヤモリは飼える?
- A
これは嬉しい質問ですね。答えは「飼えます!」です。
最近は優秀な人工餌がたくさん販売されているので、虫を触らずにヤモリを飼育することは十分可能です。特にレオパ用の人工餌は栄養バランスが優れていて、多くの飼育者が成功しています。
ただし、一つだけ注意点があります。それは個体差があること。すべてのヤモリが人工餌を食べてくれるわけではないので、飼い始める前に、そのヤモリが人工餌を食べるかどうか確認しておくことをおすすめします。
- Qかつおぶしは緊急時なら使える?
- A
緊急時の一時的な代用としてなら、使えないことはありません。
ただし、いくつか条件があります。まず、無塩のかつおぶしを選ぶこと。市販のかつおぶしの多くには塩分が含まれているので、ヤモリには負担になってしまいます。
それから、ごく少量にとどめること。かつおぶしはタンパク質豊富ですが、ヤモリに必要な他の栄養素が不足してしまいます。
最も大切なのは、できるだけ早く適切な餌を用意することです。かつおぶしはあくまでも「つなぎ」として使ってくださいね。
まとめ:ヤモリと長く幸せに暮らすために
さて、長い記事でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。ヤモリの餌について、かなり詳しくお話しできたのではないでしょうか。
最初の質問「ダンゴムシは餌になるの?」に対する答えは、**「食べないし、おすすめしない」**です。でも、だからといってがっかりする必要はありません。ヤモリの餌には、もっと良い選択肢がたくさんあるんですから。
大切なポイントをもう一度おさらいすると、まずはコオロギやミルワームなどの定番餌を中心に、人工餌も上手に活用すること。そして、カルシウム不足によるクル病を防ぐために、餌にカルシウムパウダーをまぶすことを忘れずに。
家にあるもので代用する場合は、あくまでも緊急時の一時的な措置として考えて、できるだけ早く適切な餌を用意してあげてください。
ヤモリ飼育は確かに大変な面もありますが、あの可愛い姿を見ていると、すべての苦労が吹き飛んでしまいますよね。正しい知識を身につけて、ヤモリちゃんと長く幸せに暮らしていってくださいね。
何か分からないことがあったら、遠慮なく爬虫類専門の獣医師さんに相談してみてください。きっと親身になって相談に乗ってくれるはずです。
あなたとヤモリちゃんの素敵な生活を、心から応援しています!